しまの島

ふらっと日常。

【佐藤亜紀】【黄金列車】感想

上記の本を読了した感想です。記憶違いとか勘違いとかの可能性あり。

ネタバレ等気にしていませんので悪しからず。

 

 

 

 

あらすじ

 

バロクは黄金列車ーユダヤ人没収財産を積んだ列車ーに乗り込んだ。出発はハンガリー王国ブダペスト、到着地点は実質未定。それは、長い旅の始まりだった。途中、ヒトラー死亡や線路爆破など様々な困難に見舞われる。一行は様々な手を使い、列車の中身を守りきる。物語は、ホプフガルテンからタウエルン・トンネルに向かう途中で幕を閉じる。

 

 

 

暗っ!!!ダ・ヴィンチのお勧め本で出ていたから読んでみたけど、こんなに暗い話だと思わなかった。著者の出版本見てみたら、どうやら戦争中における一般の人々の話を多く書いている人らしい。なるほどね〜。印象としては、図書館戦争の良化委員会サイドの平官僚が時代の波に翻弄されている様子を描いた本、かな。誰も所属したがらない国の機関に上からの命令で配属された主人公が、道義に反する仕事を時代の波にさらわれながらもやり遂げようとするあたりが特にね。

物語は、バロクの過去回想と現在が交互に書かれている様式。ナプコリが何でバロクの妻・カタリンの死が事故によるものだって納得しないのかが、バロクの過去回想でだんだんと分かってくる。バロクの過去に何があったのか分かることによって、バロクが最後のシーンで、赤毛に心の中で快哉を送ったのかが分かる仕組み。没収された財産を(手段は違えど)奪い返す赤毛やリゴー、バロクの存在によって、この物語にほんの少し明るさが入るようになってる。それにしても最後の一文が憎いな〜。あの一文で、バロクの印象が変わる。今までずっと時代の波に流されるだけだったと思われていたけれど、そんなことはなかったんだって。ヴァイスラーの、つまりユダヤ人の灰皿、財産をどうにか奪い取ったんだってね。

何となくだけど、これが著者が書きたかったことなのかなーと思う。戦争が起こす世の中の理不尽と諦観、そしてその中にわずかにある希望と人間の逞しさ。それらがうまく配合されることで、戦時中の暗い暗い話なのに、読了感がそこまで重くならない。

マルギットが亡くなる場面が、本当にやるせない。占領軍の兵隊が領を荒しまわることがあるってのは聞いたことあるけど、あれはないわ。その軍人が本当に前線送りになったかも定かじゃないし。でもこれが珍しい話じゃなかったんだろうな...。ヴァイスラーも追い詰められて自殺しちゃうし。幸せだった頃と比べたら、カタリンそりゃ鬱っぽくにもなるわ。二人の子供がちゃんと逃げ延びて、それなりの生活を送ることができていることを切に祈る。こうやってみると、ナチスドイツのユダヤ人政策ほんとクソだな。

アヴァルが双子の赤ちゃんの片割れの面倒見てるとこフフッってなる。イクメンはいつの時代もいいものだね。あと、駅長に賄賂の受領書に署名させようとすることろが笑える。すごくお役人っぽい(笑)