しまの島

ふらっと日常。

【宮部みゆき】【泣き童子】感想

上記の本を読了した感想です。記憶違いとか勘違いとかの可能性あり。

ネタバレ等気にしていませんので悪しからず。

 

 

 

 

あらすじ

三島屋主人の姪・おちかは今だに百物語を続けていた。今回は嫉妬深い猪の神様、夢で未来を教えてくれるお屋敷、聡い童、余所の百物語、恨みが凝った化け物に、死人の顔が宿る人のお話。謎の商人と関わりのあるお話を聞くことで、おちかはしんみりと考え込む。私は良介さんに会いたいのだろうか?あの商人は良い者なのか邪な者なのか、どちらなのだろう?と。

 

 

 

今回は振れ幅の大きいお話たちが集まった印象。軽い教訓話から人を殺してしまった話までバラエティ豊か。

まずは亥の神様のお話。う〜む、完全なる教訓話だ。これを話した文も、自分の祖母の話でなかったらよくある説話として片付けていそうだし。亥の神様は男女の仲に嫉妬するから、池の前でいちゃこらしちゃいけないって話だったはずなのに、文の祖母からお金を取り上げるってなんだか言い伝えと矛盾していないかい?亥の神様を利用しようとするからバチが当たったっていう解釈になるのかな。おちかは貰った紙の中身を見るかと思ったけど、そんなことなかった...。結局池はどこにあるのかな?文も実際に行ったことはないみたいだし、案外母親の作り話だったりするかもな〜と邪推してしまった。おちかはこの文をずっと前に手に入れていたら、誰と一緒に行きたいと思ったのかな?松太郎と縁を切るために使う?それとも、おちかとの縁談がなかったら亡くなることもなかった良介に使うのかな?

次は、からくり屋敷のお話。切ない。自分だけ生き残っちゃったという罪悪感と、それを周囲に打ち明けられない様子が真に迫っている。あとがきで、これは東北大震災の後に書かれたもので、震災の生き残りの人へのメッセージとなっているらしい。単純に生きろって言われるよりも、胸に迫るメッセージだと思う。小説家の本領発揮。

三つ目は、本書でスーパー重いお話。悪事に手を染めた人を見分けて、泣きわめく童のお話である。これはあれだ、昔聞いたことのある怪談にその先を付け加えたお話だ。その怪談とは以下のようなものである。

あるところに、美男美女の夫婦がいた。夫婦に一人目の子供が生まれるが、目は小さく、鼻は大きく、ちっとも美しくも可愛くもない。その子供を愛そうと夫婦は務めるが、なかなか愛することができない。そして、ついに家族で海に出かけた時、夫婦は赤ちゃんを海に投げ捨ててしまうのであった。それからしばらくして、夫婦にまた赤ちゃんが生まれた。今度の子供はとても可愛らしい。夫婦は子供をよく可愛がった。そして子供が3歳になった時、家族で海に出かけた。そこで、子供が言うのだ「今度は捨てないでね」と。

泣き童子では子供の生まれ変わりを示唆する役目を、悪人を察知して泣く能力が担っている。これが1度目の死を手繰り寄せ、さらには2度目の死も引き寄せてしまった。末吉は父娘にとっては恐ろしい相手だったと思うけれども、末吉が「じじい、おれがこわいか」と言ったことに憐れみを禁じ得ない。末吉だって親を選べたらあんたたちみたいな人のところに生まれてこなかったよ!それとも、娘の子供に末吉の霊が取り憑いたっていうのか!?とっても後味の悪いお話でした、まる。悪いことはできないもんだね。

四つ目は、余所様の百物語に出かけるお話。青野と一緒にお出かけだよ!おちかは青野のことを意識してはいるようだけど、今後結婚はしないというのが私の予想。おちかは身分違いの松太郎との仲を周囲が囃し立てたことで、暗い過去を持っているし、無意識の内に身分違いの相手とは線を引いてると思う。今回も、照れているというよりは頑なって印象だったし。清太郎との仲を応援していたのに、彼は全然出てこない...。もう候補から外れてしまったのか...。悲しい。

五つ目は、昔の人の恨みが凝った化け物・まぐるのお話。人に恨まれて、なんらかの危害を加えられる可能性は誰にでもある。では、その危害を凌げるよう警察官や武闘家、権力者になる方が安心なのであろうか?そのような役職に就くことによって、新たに恨みを買ったり、自ら危険に飛び込まなければならない可能性もある。それとも、そのような役職には就かず、できるだけ人に恨まれないようにする方がいいのだろうか?答えの出ない問題である。

最後は、節気日にだけ死人に顔を貸す伯父のお話。胡散臭い商人はひとまず置いておいて、伯父・春一は最期に誰に会いに行ったんだろうね?私は、次男か、もしくは両親の墓参りに行ったんじゃないかと思う。前後者ともお詫びのためにね。今まであまり素行が良くなかったみたいだから、死んでも両親とは同じところに行けないと考えて、せめて墓参りに、って考えたんじゃないかと思う。そして、裸足の商人の新たな商売が分かりましたね〜。裸足の商人は、ただ需要があるところで商売しているだけのように見える。人には良い面と悪い面があるように、商人の商売も人によって良くも悪くも見えるって感じ。まあ、存在が胡散臭いから、邪な者に見えがちだとは思うけどね。

 

 

 

 

 

続編あり。